大地震後も住み続けられる木造住宅をめざして

角田 功太郎

 私たちが暮らす住まいは、ふだんは雨や風をしのぎ、安心して眠るための場所です。しかし大地震のとき、建物には横から大きな力が加わり、壁や接合部が傷みます。建築構造の役割は、単に建物を立たせることではなく、日常の暮らしと災害時の安全を両立させることにあります。

 木造住宅の耐震基準は、過去の地震被害を受けて少しずつ改正されてきました。現在の基準では、大地震でも「倒壊しない」ことが重要な目標です。これは人命を守るうえで非常に大切です。一方で、2016年熊本地震の調査からは、倒壊を免れた住宅でも、その後に取り壊された例が多く見られました。2024年能登半島地震でも、多くの木造住宅が大きな被害を受け、地震後に住宅を使い続けることの難しさが改めて示されています。つまり、住宅の耐震性能を考えるうえでは、「倒壊しないこと」に加えて、「地震後も住み続けられること」が重要になります。

 そこで近年は、地震後の「継続使用」にも注目が集まっています。地震後も住宅を使い続けるためには、建物の変形や損傷をできるだけ小さく抑えることが重要です。住宅の耐震性能を表す代表的な指標の一つに、耐震等級があります。耐震等級とは、住宅がどの程度の地震力に耐えられるかを1〜3の段階で示したもので、等級1が建築基準法の最低水準、等級3はその1.5倍の地震力に耐えることを想定しています。同じ間取りの耐震等級1と3の住宅を振動台で同時に揺らす実験では、耐震性能の違いによって変形や損傷の程度が大きく異なることが示されています(図)。大きな変形を小さく抑えることができれば、壁や接合部の損傷を抑え、地震後に補修して住み続けられる可能性も高まります。このように、耐震性能は専門家だけの問題ではなく、私たちの生活再建に直結する身近な問題でもあります。

 地震はいつ、どこで起こるかわかりません。だからこそ、住宅を新築・購入するときには耐震等級に関心を持つこと、古い住宅では耐震診断や補強を検討することが大切です。また、家具の固定や避難経路の確認など、日常の備えも欠かせません。木造住宅を「倒れない家」から「大地震後も暮らしを続けられる家」へ近づけること。それが、木質構造の研究と教育が社会に果たす役割の一つです。

異なる耐震等級の住宅に対する振動台実験
異なる耐震等級の住宅に対する振動台実験
この記事を書いた人
角田 功太郎
角田 功太郎
すみだ こうたろう

奈良女子大学 生活環境学部 住環境学科 専任講師

専門分野:木質構造学

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