「みどり」は必ず街を涼しくするのか?

吉田 伸治

皆さんは、夏の暑さを和らげるまちづくりを行いたいと思う場合、どの様な対策を講じると良いと思いますか?多くの人は、「街を涼しくするには街路樹などの『みどり』を増やそう」と思うのではないでしょうか?これは、街路樹の植栽が夏の陽射しを遮ることにより生じる涼しさへの期待の表れと言えます。植栽には、日影を作る以外に、地面からの照り返しの軽減、気温の低下の様な夏の暑さを和らげる効果があります。一方、植栽には、風通しの悪化、蒸散に伴う湿気の増加の様な夏の暑さを助長する影響もあります。

「みどり」が夏の温熱環境に与える複合的影響
「みどり」が夏の温熱環境に与える複合的影響

私は学生時代に、この「みどり」の温熱環境に対する功罪を数値シミュレーションで分析しました。Case 1が植栽の無い舗装空間、Case2はCase1の舗装面を全て芝地にした場合、Case3はCase2の空間全体に街路樹(イチョウ)を隙間なく植栽した場合を想定しました。Case2とCase1の体感温度(SET*)の差から芝生植栽の効果を、またCase3とCase2の差から街路樹植栽の効果を評価した結果を添付の図に整理しました。図中の灰色の領域は対策によって体感温度が下がり、夏の暑さが和らいだ空間を、また白色の領域は体感温度が上がり、暑さが助長された空間を表します。これを見ると、全面芝生の場合では暑さの和らぐ空間が大きく広がるのに対し、街路樹植栽の場合では暑さが助長した空間が大きく広がることがわかります。これは闇雲に植栽された街路樹群が過度の風速低下を招いたことが原因です。尤もこの様な過剰な植栽を行うケースは稀です。従って、多くの場合、「みどり」は暑さを和らげる効果をもたらします。しかし、この様な良かれと思って講じる対策に内在する負の側面にも配慮しないと思わぬ落とし穴に陥る可能性もあることを、この結果は示しています。環境影響を評価する複眼的な視点が必要であることがわかります。

 

緑地の規模・種類の影響評価の解析ケース: Case1 植栽の無い場合, Case2 全面草地の場合, Case3 草地の上に街路樹(イチョウ)を植栽した場合.
緑地の規模・種類の影響評価の解析ケース: Case1 植栽の無い場合, Case2 全面草地の場合, Case3 草地の上に街路樹(イチョウ)を植栽した場合.
緑地の規模,種類の変化による体感温度 (SET*)の増減: (a) 草地面積の増加による体感温度の増減 (Case2 – Case1), (b) 樹木の植栽による体感温度の増減(Case3 – Case2), 図中の灰色の領域は、体感温度が低下し、夏の温熱環境が改善された領域を表す.
緑地の規模,種類の変化による体感温度 (SET*)の増減: (a) 草地面積の増加による体感温度の増減 (Case2 – Case1), (b) 樹木の植栽による体感温度の増減(Case3 – Case2), 図中の灰色の領域は、体感温度が低下し、夏の温熱環境が改善された領域を表す.

<参考文献>

吉田伸治他(2000):樹木モデルを組み込んだ対流・放射・湿気輸送連成解析による樹木の屋外温熱環境緩和効果の検討. 日本建築学会計画系論文集,536号, (PP. 87-94).

この記事を書いた人
吉田 伸治
吉田 伸治
よしだ しんじ

奈良女子大学 生活環境学部 住環境学科 教授

専門分野:都市・建築環境学、生気象学

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