レシピの難しさを“見える化”したい

髙田 雅美

料理を始めたばかりの人がレシピサイトをみると、材料や作り方は書かれていても「このレシピはどれくらい難しいのか?」は分かりません。大規模なレシピサイトでも難易度表示はほとんどなく、初心者がいきなり複雑な料理を選んでしまうことがあります。毎日料理をする人でも、レシピの料理をするときに「これは本当に自分にできるのか?」と迷った経験があり、この問題をどうにかできないかと考え始めました。

研究を進める中で気づいたのは、レシピの難しさは一つの要素だけでは決まらないということです。例えば「難しい調理動作があるかどうか」だけでは、レシピ全体の大変さは測れません。そこで、レシピに含まれるさまざまな情報を広く集めることにしました。文字数、使う調理器具の種類、調味料の数、食材の数、手順の多さなど、料理の「大変さ」を感じる要素を丁寧に拾い上げました。膨大なデータを扱う作業は大変でしたが、料理を科学的に扱う面白さを強く感じた瞬間でもあります。

こうして集めたデータをもとに、ある大規模レシピサイトに含まれる約60万件のレシピの難しさスコアを計算しました。その結果、レシピの細かな違いがしっかり反映された数値として“見える化”できたのです。特に興味深かったのは、そのレシピ投稿サイトでは、家庭料理が中心のため、極端に難しいレシピは少ないという点です。これは日本の料理文化の特徴をそのまま映しているように感じました。

“見える化”されたレシピ難易度が本当に人の感覚と合っているのかを確かめるためにアンケート調査を行いました。結果は統計的にも有意で、参加者の感じた難しさと“見える化”された難しさがよく一致していました。これは、研究者としてとても嬉しい結果でした。

レシピの難しさが“見える化”されれば、初心者向けのレシピ検索や、料理の習熟度に合わせたおすすめ機能など、料理の世界はもっと使いやすくなります。料理は「できそう」と思えることが大切です。自分に合ったレベルのレシピが選べるようになれば、料理の楽しさはさらに広がるはずだと、私は信じています。

この記事を書いた人
髙田 雅美
髙田 雅美
たかた まさみ

奈良女子大学 生活環境学部 文化情報学科 生活情報通信科学コース 教授

専門分野:最適化、数値計算プログラム、並列処理、情報倫理

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