不本意な思いで大学に入った学生が、主体的に学生生活を送るためにはどんなことが必要か?

時岡 良太

「不本意入学」とは、不本意な思いを抱えたまま入学することで、第一志望の学校に行けない場合や、そもそも進学したいと思っていなかったのに周りの勧めで仕方なく進学する場合などがあります。

 不本意入学は、学生生活を主体的に送ることを妨げる要因となります。一方で、不本意入学を経験しながらも、主体性を取り戻し、充実した学生生活を送ることができた人も多くいます。そのような人たちは、いかにして主体性を育むことができたのでしょうか?

 そのことを調べるために、不本意入学を経験して入学当初は主体性が低かったものの、その後主体性が高まった人々を対象にインタビュー調査を行いました。そして次に、分析の結果得られたモデルについて検証するためのアンケート調査を行いました。その結果を簡単に示したものが以下の図になります。

 この図の中の矢印は、そこに関係があることが統計学的に確認されたものになります。以下、この研究を通じて分かったことを挙げていきます。

(1)他者との信頼関係を築くことの重要性

 学生生活の中で、同じ学科の人や教職員、部活やアルバイト先でもいいのですが、誰かと信頼できる関係性を築くことが、主体性の高まりの基盤になることが分かりました。特に、自分の行動をしっかり受け止めてくれる人がいることが、その後の主体性の高まりにつながります。

(2)一人で考える場を持つことの重要性

 一方で、他者と離れて一人になり、じっくりと自分のことを振り返ることも大切になります。現代ではSNSで他者と常時つながっていますが、時には意図的にSNSから離れて自分の時間と場所を持つことも重要なのです。

(3)主体性に直接つながる要素

 (1)や(2)によって、「興味なかったけど勉強してみると面白い」と思えたり、「この大学に入ったからこそこの経験ができた」と思えたり、あるいは卒業後の進路イメージが明確になったりします。そういう風になってくると、学生生活に対する主体性が高まってきます。

(4)不本意入学の理由による違い

 主体性の高まりにつながる矢印が表す関係性の強さが、不本意入学の理由によって異なるということも分かりました。具体的には、第一志望不合格など学力の問題によって不本意入学となった人々の場合、「この大学に入ってよかった」と思えることが重要で、そもそも大学進学自体をそこまで望んでいなかった人々の場合、進路を具体的にイメージできるようになることが重要になります。

 

不本意な入学を経験しても、信頼できる人とのつながりや、自分を見つめ直す時間を通して、新たな目標や興味を見つけることで主体性は育まれます。大切なのは、入学した大学でどのような経験を積み、自分らしい学びを見つけていくかということです。

この記事を書いた人
時岡 良太
時岡 良太
ときおか りょうた

奈良女子大学 生活環境学部 心身健康学科 臨床心理学コース 専任講師

専門分野:臨床心理学、学生相談、人格心理学

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