食べ物で健康になれるのか?~パクチーとアレルギー予防~

小原 理加

私たちは毎日の食事から栄養をとっていますが、近年、食べ物には体を整える「健康機能」もあることが分かってきました。ここでは、その一例をご紹介します。

スパイスやハーブは料理の風味づけだけでなく、健康面での効果にも注目されています。

パクチー(コリアンダー)は地中海地方が原産の植物で、日本でも近年人気が高まり、身近な香味野菜として使われています。一方で、古代エジプトの王墓からも種が見つかるほど、歴史の長い植物でもあります。生の葉・乾燥葉・種・精油などさまざまな形で使われ、昔から薬草としても役立てられてきました。こうした背景から、パクチーに食物アレルギーをやわらげる効果があるのかどうかを調べることにしました。

パクチー
パクチー

食物アレルギーは、食べ物に含まれる特定のタンパク質に体の免疫が過剰に反応して起こります。症状は、軽いじんましんから命にかかわる重い症状まで幅があります。一般的な対策としては、原因となる食品を避ける「除去食」が行われますが、栄養がかたよったり、食事の楽しみが減ったりする問題があります。そのため、普段食べる食品の中からアレルギーをやわらげる成分を見つけることに意義があると考えました。

アレルギーは、原因物質が体に入ると、まず免疫が反応の準備をします。そして再び同じ物質が入ったときに「肥満細胞」という細胞からヒスタミンなどが放出されて症状が出ます。

脱顆粒反応のメカニズム(出典:「食物アレルギーのメカニズム」(厚生労働省)をもとに加工して作成)*1
脱顆粒反応のメカニズム(出典:「食物アレルギーのメカニズム」(厚生労働省)をもとに加工して作成)*1

今回の研究では、パクチーの葉と茎から取り出した成分が、この反応をどれだけ抑えられるかを、細胞を使って調べました。その結果、水にとけやすい成分にアレルギー反応を抑える働きがあることが分かり、全部で8種類の成分が見つかりました。そのうち2つは、これまで世界でも報告されていない新しく発見された成分でした。ただし、1つの成分が強く効くというよりも、複数の成分が協力して作用していることが考えられました。

パクチーから見つかった2種類の新規物質
パクチーから見つかった2種類の新規物質

このように、身近な香辛野菜であるパクチーにアレルギーをやわらげる可能性が示されました。今後は成分同士の組み合わせや、どのような仕組みで作用するのかなど、さらに詳しく調べることが課題です。なお、今回の結果は細胞を使った段階の研究であり、実際に人の体で同じような効果が得られるかどうかは、今後さらに詳しい検証が必要です。

*1  厚生労働省, 第4章 食物アレルギー「図2 アレルギー対応のメカニズム」, 平成22年度リウマチ・アレルギー相談員養成研修会テキスト (2010) p94 (URL : https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/kenkou/ryumachi/jouhou01.html)

この記事を書いた人
小原 理加
小原 理加
おはら りか

奈良女子大学 生活環境学部 食物栄養学科 助教

専門分野:食品成分化学、調理科学

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