産業の集積は途上国の経済発展にとって必要か?

安橋 正人

 戦後アジアは目覚ましい経済成長を遂げましたが、この成功の主要な推進要因として指摘されているのが、工業団地等の産業集積です。

 産業集積とは、特定の地域に同種または関連する企業や労働者が密集し、相互に密接な取引関係などを築いている場所のことです。例えば、日本の静岡県浜松市はオートバイ産業の集積で有名ですが、現在は自動車や精密機械等で日本有数の製造業拠点となっています。このような産業集積は、国家、特に途上国の経済発展にどのような効果があるのでしょうか?

 産業集積が雇用を創出しながら経済発展を実現するメカニズムには、以下の要因が考えられます。

 第一に、経済活動や人々が特定の地域に引き寄せられると、生産物を販売できる市場へのアクセスが容易になります。そうすれば、企業は大量生産によってコストを低下させ、その産業で優位に立つことができます。また、多くの企業がその地域で生産を始めると労働者が必要になるので、賃金が上昇して労働者も集まるようになります。

 第二に、工業団地(工場などが計画的に整備された区域)などでは、インフラや機械などの資本が集中的に投資されて、これらが効率的な生産に寄与します。

 第三に、特定地域に集積した企業の間では、様々な取引のコストを削減できます。取引のコストには、製品や資材を運ぶための輸送コストだけでなく、日常ベースの取引でのやりとりや情報交換などを行うコストも含まれます。

 第四に、産業集積内では、企業間の取引のネットワークなどを通じて、ある企業から別の企業に技術や知識が波及することが期待できます。例えば、途上国に進出した日本企業の中には、現地の取引企業や労働者に対して積極的な技術支援やトレーニングを提供することがあります。

 こうした要因から、産業集積は途上国の経済発展にとって不可欠なものと考えられます。下記の図は、産業集積による効果や相互関係をまとめたものです。

 産業集積の経済的影響を推定した私自身の研究を簡単に紹介します。

 この研究では、回帰分析と呼ばれる統計手法を用いました。分析結果から、外国直接投資(外国の企業による工場の設立など)の残高や輸出額の増加は、工業団地数と正の関係にあることがわかりました。途上国の政策には、このような産業集積の潜在力を高めることが求められています。

参考文献

安橋正人(2026)「開発途上国における持続可能な産業発展を促進するための工業団地のあり方」、『開発技術』第32巻、1-21

この記事を書いた人
安橋 正人
安橋 正人
あんばし まさひと

奈良女子大学 生活環境学部 文化情報学科 生活文化学コース 准教授

専門分野:経済学、企業経済学、イノベーション、産業開発

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