「ネガティブな考え」が研究テーマになる―「ぐるぐる思考」の臨床心理学研究

梅垣 佑介

「どうして私っていつもこうなんだろう」「悪い結果になっちゃったらどうしよう」。こんなふうに考えていると,「そんなふうにネガティブに考えていないで,前を向こうよ!」といった言葉をご家族やお友達からかけられてしまうかもしれません。でも,実はこういった「ネガティブな考え」が,臨床心理学の重要な研究テーマになるのです。

私が研究しているのは,冒頭で書いたようないわゆる「ネガティブな考え」です。こういった考えは,繰り返し生じて頭の中をぐるぐるとめぐる性質があります。そのため,「ぐるぐる思考」と呼ぶことがあります。(私が専門としている臨床心理学の専門用語では「反すう思考」と呼びます。牛や鹿が一度飲み込んだ食べ物を口まで吐き戻して嚙み直すことを「反すう」と言いますが,それを心理的に行い,過ぎたことなどについてぐるぐると考え続けることが「反すう思考」というわけです。)

奈良女子大学キャンパスで「反すう」をする鹿
奈良女子大学キャンパスで「反すう」をする鹿

この「ぐるぐる思考」を巡っては,1990年代から2000年代にかけて,臨床心理学の研究が行われるようになりました。今でも毎年たくさんの研究が発表され,最近では脳科学の領域でも注目されている,とてもホットなトピックです。

どうして「ぐるぐる思考」が脚光を浴びるようになったのか。それは,こういった考えが多くの人にみられること,特に女性に多いこと,そして,長く続けているとうつ病へと発展するリスクを持っていること,といったことが分かったためでした。

臨床心理学の研究の多くは欧米で行われています。「ぐるぐる思考」についての上述した知見も,欧米での研究から得られたものでした。一方,考え方やその影響は,文化によって異なることが知られています。そこで私は,日本に居住する人にとっても「ぐるぐる思考」は厄介なものなのだろうか,ということを調べてみることにしました。その結果,欧米で示されていたこととほとんど同等のことが分かりました。つまり,日本でも「ぐるぐる思考」は多くの人の間で認められました。そして,男性よりも女性のほうが「ぐるぐる思考」をしやすい傾向がありました*1。さらに,欧米の人と同程度に,「ぐるぐる思考」が多い人ほどうつになりやすい,ということも分かりました*2。

これらの結果をもとに,何が「ぐるぐる思考」をもたらすのか,「ぐるぐる思考」に支配されずに自分らしく考える方法は何か,といった研究を今も続けています。

 

*1: https://doi.org/10.1111/jpr.12547

*2: https://doi.org/10.1007/s41811-025-00255-2

この記事を書いた人
梅垣 佑介
梅垣 佑介
うめがき ゆうすけ

奈良女子大学 生活環境学部 心身健康学科 臨床心理学コース 准教授

専門分野:臨床心理学、認知行動療法

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