食べ方で未来の健康は変わる?―人の食生活と健康の関係を探る研究―
みなさんは、「塩分のとりすぎは体によくない」と聞いたことがあるでしょう。しかし、それが実際にどのくらい、どのような健康状態に影響するのかは、実際に人集団を対象として科学的な研究方法によって確かめる必要があります。
私たちは、食生活と健康の関係を明らかにする研究を行っています。これまでに約8万人の日本人を対象とした大規模な長期追跡調査のデータを分析し、食塩(ナトリウム)の摂取量が多い人ほど、脳卒中や心臓病などの循環器疾患になりやすく、70歳未満で生活習慣病によって亡くなるリスクも高くなることを明らかにしてきました。
また、「健康によいことがわかっていても、実際に行動を変えるのは難しい」という課題にも取り組んでいます。例えば、BGMを活用した栄養教育が減塩行動につながるかどうかを調べ、人々が健康的な行動を続けられる方法を探っています。現在は、若い女性に多い月経痛や冷えなどの健康問題と食生活の関係についても研究を進めています。将来の病気予防だけでなく、今の健康にも役立つ知見を得ることが目標です。
こうした研究では、「何をどれだけ食べたのか」を正しく把握することが欠かせません。そのため、アンケート調査を用いて食生活を評価し、その結果が実際の食事内容をどの程度反映しているかを確かめています。また、体に負担をかけずに栄養状態を調べる方法の開発のために、体の状態を示すバイオマーカーを活用した研究も進めています。さらに、ICT(情報通信技術)やAI(人工知能)を活用した新しい食事評価システムの開発にも取り組んでいます。ただデータを集めるだけでなく、その結果が本当に信頼できるものなのかを検証し、正しく解釈することも研究者の重要な役割です。

食生活と健康の研究では、多岐にわたる栄養素の摂取量、食品の種類や量、食事の時間、好み、体の状態を示す指標など、非常に多くのデータを扱います。ヒューマンエラー(人は間違いを犯すものである)の存在を前提に調査データを取り扱うトレーニングが欠かせません。また、統計学的にデータを分析し、観察された関連性における偶然(たまたま見えてしまった関連性なの?)の影響を考慮する必要もあります。データ分析では、用いた解析手法が再現できるように解析ソフトでプログラムを書くこともあります。研究を通して、データの質を見極める力、論理的に物事を整理する力などの、データサイエンスの基礎を身につけることができます。
未来に向けて、食べ方と健康のつながりをより正確に理解し、一人ひとりが自分に合った健康的な食生活を実践できる社会の実現に貢献したいと考えています。
