人とのつながりは幸せな老後につながるのか?

馬場 絢子

 日本の高齢化率(総人口に占める65歳以上人口の割合)は29%を超え,今後も上昇を続けると推計されています(内閣府, 2026)。これは世界でも類を見ない水準です。欧米をはじめとする多くの国々でも高齢化は進んでおり,特にアジアの一部の国々では,日本を上回るスピードで進行しています。高齢化の先頭を歩んできた日本が,これからどのような社会を築いていくのかは,世界にとっても重要な関心事と言えるでしょう。

 加齢は,心身の機能低下や身近な人との別れなど,さまざまな変化を伴います。しかし,高齢者の幸福感は必ずしも低いわけではありません。この現象はエイジングパラドックスと呼ばれ,その背景を説明するさまざまな理論やモデルが提唱されています。では,幸せな老後を送るためには,なにが必要なのでしょうか。そもそも幸せな老後とは,どのようなものなのでしょうか。

 わたしたちのチームでは,高齢者が地域貢献活動を通じて得る生きがい感に注目し,フィールド調査やインタビュー調査による研究を行ってきました (松田他, 2022; Matsuda et al., 2024)。その結果,活動に参加する高齢者は,Hedonic(満足・快適),Eudaimonic(自己実現・成長),Social(つながり・貢献)というWell-beingの3つの側面を,互いに関連し合うものとして体験していることが分かりました。なかでもSocial well-beingは,活動を一定期間継続するなかで,時間をかけて育まれていました。このような地域貢献活動に代表される社会参加,すなわち人や社会とのつながりを持ち続けることは,Socialな側面を通じて多面的なWell-beingにつながる可能性があります。

 老年期においては,前述のようなさまざまな変化に加え,これまでの人生への後悔や将来への不安などと向き合い,自らの人生を統合していくことが重要な心理・発達的課題となります(Erikson, 1952)。人とのつながりは,誰かと語り合ったり新たな役割を得たりすることを通じて,自らの人生を振り返り,捉え直すきっかけにもなります。さらに,人や社会とのつながりを失うことはフレイルの入り口であるとも言われ,社会参加はフレイル予防の3本柱の1つに数えられます (飯島, 2014)。

 ただし,社会参加といっても,そのあり方は人それぞれです。大切なのは,その人に合った形で人や社会とのつながりを持ち続けられることなのかもしれません。一人ひとりにフィットした社会参加との出会い方や,安心して一歩踏み出せる方法について,一緒に考えてみませんか?

 

図 地域貢献活動(フレイルチェック活動)の様子(Note. Reprinted from "Multifaceted Well-Being Experienced by Community Dwelling Older Adults Engaged in Volunteering Activities of Frailty Prevention in Japan," by Y. Matsuda, A. Baba, I. Sugawara, B.-K. Son, and K. Iijima, 2024, Geriatrics & Gerontology International, 24(S1), p. 275 (https://doi.org/10.1111/ggi.14826 ). CC BY.)
図 地域貢献活動(フレイルチェック活動)の様子(Note. Reprinted from "Multifaceted Well-Being Experienced by Community Dwelling Older Adults Engaged in Volunteering Activities of Frailty Prevention in Japan," by Y. Matsuda, A. Baba, I. Sugawara, B.-K. Son, and K. Iijima, 2024, Geriatrics & Gerontology International, 24(S1), p. 275 (https://doi.org/10.1111/ggi.14826 ). CC BY.)

引用文献

  • Erikson, E.H. (1952). The Life Cycle Completed:A Review. W. W.Norton & Company.
  • 飯島勝矢 (2014). 平成26年度厚生労働科学研究費補助金(長寿科学総合研究事業)「虚弱・サルコペニアモデルを踏まえた高齢者食生活支援の枠組みと包括的介護予防プログラムの考案および検証を目的とした調査研究」報告書 Retrieved July 17, 2026, from https://mhlw-grants.niph.go.jp/project/24136
  • 松田弥花・馬場絢子・菅原育子・孫輔卿・飯島勝矢 (2022). 地域活動に従事する高齢者のWell-being概念に関する文献研究 広島大学大学院人間社会科学研究科紀要「教育学研究」, (3), 163-172. https://doi.org/10.15027/53391
  • Matsuda, Y., Baba, A., Sugawara, I., Son, B.K.,& Iijima, K. (2024). Multifaceted well-being experienced by community dwelling older adults engaged in volunteering activities of frailty prevention in Japan. Geriatrics & Gerontology International, 1–6. https://doi.org/10.1111/ggi.14826
この記事を書いた人
馬場 絢子
馬場 絢子
ばば あやこ 

奈良女子大学 生活環境学部 心身健康学科 臨床心理学コース 助教

専門分野:家族心理学、老年臨床心理学

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