見やすい照明は年齢によって違うのか?
私たちは毎日、朝起きて身支度をし、昼は勉強や仕事をし、夜はくつろいで過ごします。では、そのときに「見やすい」「心地よい」と感じる照明は、誰にとっても同じなのでしょうか。
■ 年をとると、目に入る光は減る
年齢を重ねると、瞳孔が小さくなったり、水晶体の透明度が低下したりするため、目に入る光の量が減ります。暗い場所では物が見えにくくなる一方、強い光をまぶしく感じやすくなり、明るさの変化にも慣れにくくなります。高齢者には若い人より多くの光が必要になる場合がありますが、単純に明るくすればよいわけではありません。
■ 実験でわかったこと
私たちの研究室では、20〜24歳の女性13名と70〜83歳の女性14名を対象に、朝と夕方・夜の照明を比較しました。照度は50・220・700ルクス(lx)の3段階です。照度は、机や床などの面に届く光の量を表す指標で、今回の3条件はおおよそ「暗い室内」「一般的な室内」「明るい作業環境」に相当します。光の色は3000Kと5300Kの2条件としました。K(ケルビン)は光の色合いを表す単位で、3000Kは電球色に近い暖かい光、5300Kは昼白色にあたる白っぽい光です。参加者には「明るい」「快適」「落ち着く」などの印象を答えてもらい、同時に心拍も測定しました。

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最も暗い50ルクスでは、年齢にかかわらず評価が低くなりました。若い人では220ルクスと700ルクスに大きな差がなかった一方、高齢者では、概ね明るくなるほど評価が高くなりました。また、若い人は暖かい電球色を好む傾向がありましたが、高齢者では光の色よりも明るさや時間帯の影響が大きく表れました。興味深いことに、「心地よい」と感じる照明で、心拍が最も安定するとは限らないことも分かりました。
■ 「どう変わるか」も大切
別の実験では、照明の切り替え方も調べています。若い人では、条件によっては、明るさと光の色を20〜40秒ほどかけて変えたほうが、一瞬で切り替えるより快適で受け入れやすいと評価されました。一方、高齢者では変化の速さによる評価の違いは比較的小さいことが分かりました。
私たちが目指しているのは、「高齢者だから明るくする」という一律の照明ではありません。年齢、時間帯、読書・食事・休息といった生活場面に合わせて、明るさ、光の色、変化の速さを整え、一日を通して見やすく、疲れにくい住まいをつくることです。