ネパールの世界遺産のまちなみ保存
奈良県では、ちょうど「飛鳥・藤原の宮都」がユネスコの世界遺産に登録される見通しになったところですが、実は、世界で一番最初に町が世界遺産に登録されたのは、ネパールのカトマンズ盆地の3つのまちです。ほぼ半世紀前の1979年のことでした。登録のためには町の中にある寺院など歴史的建造物を調べて、インベントリーと呼ばれる一覧リストを作成する必要があります。カトマンズ盆地のインベントリーは、その後、世界遺産登録を目指す世界中のまちのお手本になりました。3つのまちは、首都のカトマンズ、大学のまちでもあるパタン、少し離れたバクタプルです。関西に例えると、順に大阪、京都、奈良といったところでしょうか。
中でも特に良くまちなみが残っているのは、バクタプルです。ここで学生と一緒に毎年まちなみ保存調査をしていて、現在、バクタプルの歴史的旧市街全体で、ざっとですが、8,000棟の記録を終えたところです。まちなみ保存と言っても、そんなに簡単に保存ができるわけではありません。世界遺産のまちをめがけて世界中から観光客が来るので、昔は無かったお店がどうしても増えていきます。また、世界一の高さのエベレスト山などヒマラヤの山々はネパールにあるのですが、これはユーラシア大陸にインド(亜大陸)が衝突して盛り上がった山脈です。こうした地理的な成り立ちから、ネパールでは頻繁に大地震が起きて、建物も度々大きな被害を受ける運命にあります。
実は、世界遺産登録リストには、裏リストのようなものがあって、それは、危機遺産リストと言います。世界遺産に一度登録されても、その後の保全状態が良好でないと、ユネスコは危機遺産リストに載せて、このままでは登録を取り消すぞと、警告するのです。カトマンズ盆地も、2003年に危機遺産リスト入りしてしまいました。ユネスコやネパール政府の努力によって、歴史的建造物の保全マニュアルをつくり、2007年になんとか危機遺産リストを脱しました。それでも観光化も地震も続いています。私たちの研究チームでは、いつ頃どのような理由で建物の増改築や建替えが行われたのかを現地の大学と共同調査して、歴史的な建造物や伝統的な住宅の適切な保全のあり方を研究・模索しています。
